ISSUE 2「八幡馬」号のための下調べをしています。
現在、八幡馬を製造しているのは大久保直次郎さんと株式会社八幡馬さん。株式会社八幡馬さんの方は、会社として従業員の方が機械等を用いて製造しています。一方の直次郎さんは、鉈の一刀彫で伝統的な八幡馬を作り続けているので、どうしても比べられてしまうと思います。僕も、株式会社八幡馬さんの方は正直わからないことが多いと思ってました。今回八幡馬で1冊作るにあたり、やっぱり両者を伝えなければいけないと思い、株式会社八幡馬の高橋社長にお話しを伺ってきました。
私、Uターンしてから地元のことを時々調べていて、1973年の新聞記事を以前図書館で見つけていたんです。「八幡馬作りの名人 福沢章雄さん(88)」。株式会社八幡馬の前進、八幡馬製造 合資会社の初代社長をされた方で、株式会社八幡馬さんが現在作る八幡馬の元になるデザインを作られた方です。記事は、土産物としての八幡馬を開発したとありましたが、記事を見つけた時は正直心に響かなかったんです。でも、今回あらためて資料を調べたり、福沢さんを切り口に高橋社長にお話しを伺ったら面白かった。
株式会社八幡馬さんは、八戸のために八幡馬を土産物にしようと、直次郎さんのような職人ではなく労働者が作れるデザインにして、機械化を取り入れて手頃に手に取れる価格にして、そして八幡馬を一番PRしてきました。現在の八幡馬の知名度貢献に、おそらく一番尽力されている。八幡馬の胸の模様に八戸にまつわるウミネコや菊の花などを描くことも、八戸市民には盆踊りの歌でお馴染みの「八幡馬のうた」の制作も、八幡馬の子どもたちへの絵付け体験・八幡馬の紹介も、八戸の観光と経済のため。戦後再スタートした時は、戦争で旦那さんを亡くした女性の収入をつくるという、社会貢献もされてきました。
直次郎さんが作る民藝としての八幡馬とは少し違うかもしれません。でも、地域に貢献しようと尽力されてきた会社であることを伝えることで、これまでと違う新たな価値を「のへの」で伝えたい、八幡馬を後世に残したいと尽力されていることを伝えたい、そう思いました。